特集 地域におけるたばこ対策の取り組み
たばこの経済分析
里村 一成
1
,
中原 俊隆
1
1京都大学医学部公衆衛生学教室
pp.803-807
発行日 1999年11月15日
Published Date 1999/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902185
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
日本におけるたばこ産業は明治37年に製造専売制がしかれてから,昭和60年に専売公社からたばこ産業になるまで81年もの間,専売制に守られてきた.専売制度においてその売り上げは国家の収入となり,たばこの消費は国家財政を助けることとなり,その販売が軍事費の捻出に用いられたこともあった.現在,たばこ産業として一企業になってはいるものの,その60%の株式は大蔵省が所持しており,完全な民間企業というにはさらなる時間が必要と思われる.
専売制度の期間には,たばこが社会に与える負の価値の検討はあまり行われなかった.これは一つには,アメリカでたばこの経済的な分析が行われるようになったのは,1970年代後半にたばこによる医療費増が問題になってからであり,必ずしもたばこが専売品であり,国家経済を担っていたからばかりではない.現在,喫煙は国民の健康を阻害し,超過医療費や超過死亡の原因になっているだけでなく,たばこによる火災などでも社会に対し経済的損失を与えていると認識されるようになり,日本においても経済的分析が行われるようになってきた.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.