特集 結核とハンセン病について考える
ハンセン病対策の反省
村上 國男
1,2
1救世軍清瀬病院
2国立療養所多磨全生園
pp.148-153
発行日 1999年3月15日
Published Date 1999/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902038
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国の政策が後世になって誤りであったと反省させられることがある.その多くは最初は国民の大部分によって熱狂的に支持されていた時代を経て,なんらかのきっかけによって価値観のどんでん返しが起こり,世論がその誤りに気付くという図式をとる.国際政治の世界では日韓併合とか大東亜戦争(第二次世界大戦)がそうであり,経済の世界ではバブル経済の崩壊がそうであった.公衆衛生の世界で最も顕著なものがハンセン病対策であって,これを象徴するのがらい予防法とその廃止である.
誤った政策は,形式的には一握りの政策決定者によって策定されているが,世論がこれを強く支持したという事実を無視してはなならない.見方によっては世論が操作されたと考えられなくはないが,むしろ容易に操作される国民的合意(コンセンサス)が土壌としてあったと考えるべきであろう.ハンセン病対策の場合,その土壤とは公共の福祉の論理であり,弱者排除(優生思想)の論理である.
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