レポート
健康政策学とその国際的な動向
宮城島 一明
1
,
中原 俊隆
1
1京都大学大学院医学研究科社会医学系社会予防医学講座公衆衛生学
pp.62-64
発行日 1999年1月15日
Published Date 1999/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902021
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わが国の行政は,戦後,地方自治の原則に基づく地方分権体制として再整備されたが,その後の実際の運営は戦前の伝統を引きずった中央集権的体制により行われてきたことは異論のないところである.健康に関してもその政策のあり方などについて各方面で種々活発な議論は行われてきているが,実際の政策の立案・決定は厚生省主導で行われてきたといっても過言ではない.このことは逆にいえば,健康政策に関する議論は厚生省から離れたところではあまり実効のあるものとはならないため,健康政策学を構築するというような動きは大きなものとはならなかったといってもよいであろう.しかし米英では,わが国と異なり,健康政策学はSchool of Public Healthにおける大学院レベルの研究・教育の対象として確立したものとなっており,その動向が実際の健康政策に及ぼす影響も大きい.
わが国の行政は,現在戦後体制の変革が進められており,健康政策においても例外ではない.地域保健法を例にとれば,保健所の財政に対する国庫補助がなくなり,地方に権限が委譲され,保健所の機能強化という題目の下,地方独自,また保健所独自の施策の展開が求められている.このような時,保健関係者は自らの考えに基づく健康政策を構築し提案していくことを求められている.こうしたとき,海外の健康政策研究の動向はなにがしかの示唆を与えてくれるものと思われる.本稿では,世界各地域の健康政策研究の動向を最近開催された健康政策国際学会の議論から紹介したい.
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