今月の臨床 早期子宮頸癌--今日の焦点
集団検診の意義とその問題点
野田 起一郎
1
,
古屋 恒雄
1
,
蒔田 光郎
1
Kiichiro Noda
1
1東北大学医学部産婦人科教室
pp.85-89
発行日 1968年1月10日
Published Date 1968/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203832
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I.子宮癌集団検診の意義とその効果
子宮癌は初期に治療すれば諸臓器の癌のうち,最も予後のよい癌の一つである。しかも,最近の婦人科診断学の進歩によつて患者が医師を訪れさえすれば,きわめて初期の段階で子宮癌を発見することが可能となつた。集団検診はこの早期発見のための積極的な,最も有効な手段であると考えられる。このような観点から,最近,本邦各地において,子宮癌集団検診が試みられていることはきわめて,喜ばしいことである。
子宮癌集団検診は定義通り大衆検査によつて,無自覚,無症状のいわゆる健康婦人の中から癌を発見しようとするものである。一般には不正性器出血が子宮癌の初発症状と考えられてきたが,われわれが宮城県て細胞診による集団検診を行なつた成績ては,集団検診で発見される頸癌の85%,上皮内癌の90%は不正性器出血を認めなかつた。この意味でも,無症状の婦人を1人でも多く受診させることが必要であり,この受診率の向上は民衆の癌に対する正しい理解なしには期待できない。反面,われわれの経験からすれば,集団検診によりせつかく初期癌が発見されながら,無知な患者は自覚症状のないことを理由に治療を拒否するものがあり,結局は民衆の正しい啓蒙なしには正しい癌対策は生れないことを悟つた。このような理由から,集団検診では癌発見に努力すると共に癌に対する民衆啓蒙にも意を注ぐ必要がある。
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