特集 小児期の成人病
小児期からの成人病予防について—その現状と今後の課題
村田 光範
1
1東京女子医科大学附属第二病院,小児科
pp.842-844
発行日 1996年12月15日
Published Date 1996/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901602
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ライフスタイルと健康障害
第二次世界大戦が終わって50年あまりが過ぎたが,その間わが国は急速な社会的,経済的な発展を遂げ,そして,現在では飽食の時代といわれる豊かで,平和で,自由な生活を享受できる時代になった.このような生活状況の変化は,病気についても大きな変化をもたらした.それまで猛威を振るっていた結核は昭和25年を峠に減少傾向を示し,厚生省は結核にとって代わる厚生行政上の対策として昭和31年に「成人病予防対策協議会」を設け,このとき成人病という言葉が使われたのである.そのころのわが国の3大死因であった脳血管疾患,悪性新生物,心疾患に加えて,悪性でない新生物,高血圧性疾患,精神病を伴わない老衰を成人病としたが,その後,昭和46年にWHOの世界保健デーの目標にちなんで糖尿病が加えられた.したがって成人病という言葉はかなり明確な病気を指しているのである.
成人病という言葉であるが,これを英語に直訳すると“adult disease”ということになる.このような用語を英語圏の文献でかつては見たことがなかった.ところが最近出版された“Textbook of Pediatric Nutrition, 3rd ed.”に“Childhood Diet and Adult Disease”1)という章があり,この中でadult diseaseとは表1に示したものを挙げている.これを見ると,わが国でいう成人病とほぼ同じ概念でadult diseaseを捉えているといってよいであろう.
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