60巻記念シリーズ・21世紀へのメッセージ
人類のよりよい生存に向けて
土屋 健三郎
1,2
1前 産業医科大学
2現 慶應義塾大学
pp.606-607
発行日 1996年9月15日
Published Date 1996/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901541
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カレルの予言
21世紀まであと数年ということで何となく落ちつかない雰囲気が漂っている今日この頃であるが,よく考えてみると地球や人類の年齢は脈々と続いており,そのあいだに区切れがあるわけではない.年号などというのは人間が勝手に創ったもので,社会や人間の年齢を数えるための便利な記号に過ぎない.ところで20世紀の100年と例えば10世紀の100年とでは同じ物差しの「年」を用いては比較できないのかも知れない.というのはこの20世紀100年間に,100年前に成人であった人々が想像もしなかった変革を遂げたからである.
もっとも既に1935年には『人間—この未知なるもの』を著作したカレルはその著述の中で当時の人類の劇的な科学技術進歩に対して警告を鳴らし,このような急激な技術変革は人類を滅亡させることになると述べている.にもかかわらず20世紀の中期からの50年間に人類の特に先進諸国における科学技術の変革は幾何級数的に進展し,今日では特にアジア諸国を中心として少なくとも物的生産力や経済力は決して衰退することがない.
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