連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・216
海鳥が語ってくれる人類生存の危機の縮図
柳田 邦男
pp.86-87
発行日 2025年1月10日
Published Date 2025/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091713550350010086
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夕暮れが近づいた頃,近くの神田川沿いの遊歩道を散策すると,岸辺の木立ちのなかから,一斉に100羽以上のムクドリが飛び立って,川を横切り,やや離れた住宅の庭木に移動する。どこかにある夜の塒に帰る前なので,落ち着きがない感じがする。ムクドリの群が遠くに去ると,電線にオナガが2羽並んでいて,鳴き声をあげている。長い尻尾を誇張するかのようにして,さっと飛び立つと,すぐ近くのこんもりと繁った樹木のなかに姿を消す。路上では,スズメがチョンチョンはねながら,何かを啄んでいる。
小鳥たちとのそんな平凡な出逢いの時間を持てることは,ウクライナやパレスチナ・ガザ地区の状況を考えると,何と幸運なことかと思う。
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