特集 地域リハビリテーション
地域リハビリテーションの動向と今後の発展
澤村 誠志
1
1兵庫県立総合リハビリテーションセンターリハビリテーション中央病院
pp.588-592
発行日 1995年9月15日
Published Date 1995/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901332
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地域リハビリテーション活動を必要とする背景
世界に類をみない速度で長寿社会を迎えつっあるわが国では80歳以上の高齢者に顕在化する痴呆への対策とともに,介護力の不足が最大の課題となっている.特に介護にあたる家族の精神的,身体的,経済的にみて不公平な負担が問題となっている.この地域における介護力の不足,住宅など社会資源の不足の中で,単身にて地域に住む要介護老人や重度の障害者の住みつづけたいとする権利が問われるようになってきた.介護を必要としてもできるだけ,住み慣れた地域に住みつづけたいとする住民のニーズと,入院,入所による財政上の負担から,医療・福祉の先進国ではすでに十数年前より病床数を整理し,極力,入院期間を制限する一方で受け皿としての在宅医療,在宅福祉サービスの充実に向かって多くの転換努力が積み重ねられてきている.わが国でも遅まきながらも同じような方向をとりつつあるが,経済優先政策の中で先進国に比較してGDP比できわめて低く抑えられてきた社会保障費の枠の増加には政治的に重要な判断が必要であるが,残念ながら期待薄である.さらに,この低い社会保障枠の中においても地域における社会福祉サービスの部門がこれまで年金や医療に比較して異常に低く抑圧されてきた.このために,在宅医療・在宅福祉サービスなど地域の受け皿は,きわめて脆弱である.
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