保健行政スコープ
こどものいじめと自殺について
橋爪 章
1
1厚生省保健医療局企画課
pp.221-223
発行日 1995年3月15日
Published Date 1995/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901230
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昨年11月末から12月にかけて,いじめを苦にして自殺した中学生の事件を契機に,こどものいじあと自殺に関する報道が急増した時期があった.当時は,ほぼ週に1回のペースで,各地での中学生の自殺が報道されていたのだが,報道の基本的なトーンは「わが国の中学生のおかれている状況は異常だ」,「こどもの自殺増加の背景にはいじめがある」といったところであった.これらの報道にさらされて,フィーリングとして「異常」や「増加」を受け止められた方も多いであろう.
報道機関が,社会に潜む問題点をあばきだすための方策としてセンセーショナルに「異常」や「増加」を印象づけることにはそれなりに意義があるのだが,本誌の読者層であるところの公衆衛生のプロの方々には,「異常」なり「増加」なりを数量化して分析するセンスが求められており,問題の本質とは若干ずれるかもしれないが,公衆衛生的アプローチを考える適当な題材としてこどものいじめと自殺を取り上げてみたい.たとえば「○○地域には△△病が多い」ということがまことしやかに語り継がれ,特別対策を検討したりもしたが,いざ数量化してみるとそのような事実はなく,単に△△病に詳しい研究者が○○地域を診療圏としていただけだった,というような話を耳にすることがある.問題が提起されている現象を正しく把握するのに,数量化が必要なゆえんである.
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