アニュアル・レポート
公衆衛生学の動向—第53回日本公衆衛生学会を中心に
能勢 隆之
1,2
1鳥取大学医学部公衆衛生学
2第53回日本公衆衛生学会総会
pp.195-197
発行日 1995年3月15日
Published Date 1995/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901222
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はじめに
日本の人口は2020年には超高齢化社会に突入すると推計されている.社会的価値あるいは生存の価値観が多様化すると同時に,その価値観が急速に変化しているため,公衆衛生分野の施策も変化することを余儀なくされている今日であり,伝統的考え方を踏襲するのみでは対応しきれなくなっている.かつ,保健・医療・福祉の連携が叫ばれるなか,保健を中心に活動してきた公衆衛生も,他の2つの分野との合体した考え方と施策が必要である.
公衆衛生対策は伝染病予防よりはじまり,現在では,習慣病といわれる成人病や難病,精神疾患,産業廃棄物処理など対応の困難な課題を解決しなくてはならなくなっている.また,寿命の延長により,病気の内容も老化に伴うものが多くなり,だれもが障害者にならざるをえなくなっている.生きていても,寝たきり状態で自立して生活が出来なければ“社会的死”とまでいわれるようになり,生存の意義が変遷しつつある.
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