特集 公衆衛生の新たな地平
公衆衛生領域における疫学研究の推進
青木 國雄
1
1愛知県健康づくり振興等事業団(愛知県がんセンター内)
pp.11-15
発行日 1995年1月15日
Published Date 1995/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901177
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はじめに
公衆衛生の使命は,すべての人がより長命で質の高い人生を過ごせるように生活環境条件を整えることにある.時によっては積極的に個人単位の対策を行い,病の拡大を防止している,総括的,管理的でありながら,きめ細かい実践活動を企画し,多数のプログラムの中から優先順位を決め,限られた予算の中で最大の効果を上げねばならない.そのためにはあらゆる科学研究の成果を利用してゆく必要がある.疫学はこうした公衆衛生の目的を達成するために研究成果を提供しているわけである.公衆衛生活動が広範なため,疫学の役割も多種多様である.わが国は平均寿命が世界一という極めて高い水準の生活環境条件にあるので,研究情報もより質の高い,きめ細かなものが要求されている.また社会環境の変動が激しいので,新しく発生する健康問題も多様であり,それに対応する疫学の役割も質的な向上を求められている.
この20〜30年間,医学や他の自然科学の進歩は極めて大きく,新しい理論や方法論が次々と開発されており,疫学研究もそれらを利用しながらより本質に迫る研究を提供しようとしているが,多くの未熟な点もある.コンピュータの普及が情報収集,管理,処理を極めて容易にしたことは,研究のみならず公衆衛生に果たした役割も極めて大きい.
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