特集 21世紀の脳科学
脳科学研究推進計画について
伊藤 正男
1
Masao Ito
1
1理化学研究所国際フロンティア研究システム
pp.2-4
発行日 1997年2月15日
Published Date 1997/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901159
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科学技術庁内部に設けられた「脳科学の推進に関する研究会」が平成8年6月発表した戦略研究計画「脳科学の時代」は,毎年1000億円ずつ20年間,合計2兆円の政府支出を見込んだ大型プロジェクト計画で,新聞紙上を賑わしたし,国際的にも大きな話題となった。「脳科学の時代」は「脳を知る」,「脳を守る」,「脳を創る」の三つの方向についての20年計画で,47プロジェクト案を含んでいる。計画を遂行するため,大きな脳科学研究グループを持つ全国の大学,研究所を基幹研究所群として,また,小さな研究グループは戦略研究プロジェクトチーム群として,それぞれネットワークを作り,さらに脳科学総合研究所を新設して,計画全体の総合的な推進の基盤とするよう提案している(図1)。また,脳科学の研究者を養成するためのポストドク,プレドクコースについても提案している。
脳科学の推進に関する研究会の座長を務めた立場から,この「脳科学の時代」が発案されるに至った事情を説明しよう。脳は長い間こころの座として注目されてきたが,あまりの複雑さのため,その研究は自然科学の主流にはなかなかならないできた。しかし,戦後50年にわたる地道な研究の積み上げにより,多くの有効な方法と技術が生み出され,神経科学と呼ばれる基礎的な脳科学研究が脚光を浴びるようになった。
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