視点
目の保健
中島 章
1
1順天堂大学医学部
pp.681-683
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901121
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1.世界の失明,トラコーマ
視覚は最も大切な感覚で,ヒトの生活に重要な役割を果たしている.視覚の重度の障害は,文明の進んだ現代社会では,生命に危険を及ぼすことはないが,残った感覚をフルに使っても日常生活が大変に不便になり,生活の質が低下する.わが国の視覚障害者は人口のおよそ0.3%,そのうち重度のものはその半分で,他の先進国に比して特に多いわけではない.しかし,欧米,特にスカンジナビア諸国に比べて,視覚障害者の援護にさらに努力が望まれる.
視覚障害者の頻度をわが国でさらに低下させることは簡単ではない.昔はトラコーマが失明予防上大きな問題であり,トラコーマ予防法が明治時代に制定され,公衆衛生的な対策が行われた.世界的に見ると,トラコーマ患者数は今日でも世界人口の1割,それによる失明は数百万人と推定され,日本の終戦直後の状態(1950年頃)に対比される.しかし日本ではトラコーマによる失明は,淋菌による結膜炎(膿漏眼)とともに後を絶って久しく,昭和58年にはトラコーマ予防法も有名無実の法として廃止された.
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