特集 公衆衛生活動の国際的な展開
パキスタン・カラチ地区における麻疹対策調査
磯村 思无
1
1名古屋大学医学部医動物学講座
pp.551-554
発行日 1994年8月15日
Published Date 1994/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901089
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◆はじめに
WHOを中心とした各機関により予防接種拡大計画(Expanding Programme of Immunization,EPI)が世界各地で展開された結果,麻疹の発生数は確実に減少し,1990年における全世界の小児の麻疹ワクチン接種率は80%以上,年間200万例の麻疹死亡が予防出来るようになったが,いまだに世界全体では開発途上国を中心に年間麻疹罹患例数は約4,500万,死亡数は100万例と推定され,実際には数倍の例が発生していると思われる1,2).熱帯地域の発展途上国における麻疹の臨床的特徴として,下記事項が注目される.
(1)罹患年齢が低く1歳前後の乳幼児が主な犠牲者になっている.
(2)合併症(特に下痢と栄養障害)が多く,途上国の小児死亡の大きな原因疾患である.
(3)ワクチン接種後の抗体獲得率は,特定の野外試験の結果では欧米や本邦と同様であるが,一般接種の有効性は必ずしも良くない.
一方,麻疹対策の基本である麻疹ワクチンのEPI作戦上,次の問題点が指摘される.
(1)接種現場まで:ワクチン供給網の整備,特に末端までの温度管理の問題.
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