連載 感染症実地疫学・11
宮崎県での麻疹アウトブレイク調査
森 伸生
1
1関西医科大学小児科学講座
pp.882-886
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100684
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
わが国では1978年から麻疹ワクチンが定期接種として行われ,その後,麻疹の患者数は減少した.2001年には,過去10年間では最も多い患者発生がみられ,小児ばかりでなく,小学校から大学,医療機関などを巻き込んで発生し,重症者や死者も出て,地域での問題となった.定点からの患者報告数は33,812人(推計:発生数 年間20~30万人,死亡者数 約100名)であった.これは,わが国における麻疹ワクチンの接種率は70~80%程度で,もっとも必要とする1歳代での接種率は50%程度と低いことによるものと考えられた.そこで,麻疹ワクチンの1歳早期(12~15か月)での接種をすすめた.各地では,「はしかゼロ運動」が起こり,多くの人々の努力と協力により1歳代のワクチン接種率は急速に改善した.2005年は定点報告数545人(推計5~6千人程度)まで減少した.
麻疹は,世界中でも多くの人が罹患し,感染症による死亡の第6位を占めている.WHOは,世界から麻疹を排除(elimination)する(地域での発生をゼロとし,他から持ち込まれても流行が拡がらない)ことを目標とし,南北アメリカではこれを達成しつつあり,ヨーロッパおよび旧ソ連邦地域では2007年,地中海地域では2010年を排除(elimination)達成の目標時期としている.日本を含むWHO西太平洋地域では,2012年を目標に設定した.
そのような背景の中,筆者は国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(FETP)在籍中の2003年に,宮崎県における麻疹アウトブレイクに関わる経験をした.本稿ではその経験の概要,麻疹対策の重要性を述べる.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.