特集 公衆衛生活動の国際的な展開
タイにおける保健情報システム
丸井 英二
1
1東京大学留学生センター,国際保健学専攻国際疫学
pp.547-550
発行日 1994年8月15日
Published Date 1994/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901088
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◆はじめに:保健情報システムの意義
本稿ではタイの保健医療システムについて紹介をするが,少しだけ前置きをしておきたい.
今回の特集のように,最近は途上国の健康問題を取り上げて論議される機会が多い.そうしたときに,時おり見かけられる反応のひとつに,途上国というのは,われわれがすでに克服した感染症などが依然として残っている未開発な国なのだという考え方がある.日本などの「先進国」の高齢化した社会の健康問題とは全く異質な問題を抱えている世界のことだと決めつけてしまう,そうした見方では実は本当のところはわからない.むしろ,健康に関しては共通の問題を見出していくことが,他の国の状況を理解する道となっていくことが多い.
したがって,国際保健において他の国の健康を考えることは,実はわが国の健康問題そのもの,あるいはわが国の保健医療の制度やシステムを見直すことに他ならない.いわば自分たちの社会の鏡としての国際保健の意味を重要視したい.
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