特集 地域保健をどうすすめるか—保健所長はこう主張する
大都市における保健事業の構築
和気 健三
1
Kenzo WAKE
1
1神戸市須磨保健所
pp.694-698
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900895
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■はじめに
21世紀まで余すところ6年となり,WHOは「西暦2000年までに世界のすべての人々に健康を」の実現に力を注いでいる.しかし,世界中のあちこちで紛争が生じ,尊い生命が失われ,貧困と飢餓に苦しんでいる人々が数多くいる.地球規模での環境破壊が進み健康への影響が心配される.こう考えると21世紀がどのような世界になるか予想がしにくい.ただ,わが国が高齢社会になることは確実で,厚生省人口問題研究所の中位推計では,2025年に高齢化率は25.4%となる.生活習慣病としての成人病,寝たきりや痴呆性老人がますます大きな問題になると思われる.エイズの動向も,今後の対応が注目される.乳児死亡率は戦後著しく改善されたが,低出生率,小児アトピーなど身近な生活環境と関連して,母子保健もこれからの課題といえる.大都市では保健事業を進める上で,保健所は身近な保健サービスを実施する機能と専門的・技術的な機能をあわせて考慮せねばならない.そして,変化の激しい社会の中にあって,的確に保健ニーズを把握し,医療・福祉との連携のもとに地域特性を踏まえた保健活動を担うべきだと思う.
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