特集 明日の医師像と医学教育
公衆衛生教育の課題と展望
上島 弘嗣
1
Hirotsugu UESHIMA
1
1滋賀医科大学福祉保健医学講座
pp.390-393
発行日 1993年6月15日
Published Date 1993/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900818
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◆はじめに
公衆衛生の主たる対象となる課題は,時代とともに移り変わる.感染症の時代から,慢性疾患への対策の時代,さらには老人の生命の充実の時代へと推移してきた.そして,一時期,感染症の時代は終わったと考えられたりしたが,エイズの問題が現れ,感染症対策の問題は形を変えて再来した.慢性疾患の代表である脳卒中も,死亡率が最も高かった時期より70%も低下したとはいえ,高齢での発症といわゆる「寝たきり」問題が新たに生じてきた1).そして,世界の長寿国のトップに立った高齢化社会においては,単なる疾病の予防と死の先送りではなく,生命の充実(quality of life)の問題が生じてきた.このように,目先の課題は時代と共に移り変わったが,従来の課題がなくなったのではなく,むしろ従来の課題に加えて,新たなる広がりを見せたのだといえる.
ここでは,上述のような状況の中,まず,公衆衛生教育の一般的な課題として,学生に公衆衛生への興味をいかに引き出すか,また,それと関連して能動的学習の方法の重要性について述べる.そして次に,時代が高齢化社会へ急速に推移する中での,公衆衛生の個別的な課題について述べたい.
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