特集 明日の医師像と医学教育
衛生学教育の新たな工夫—新しい革袋には新しい酒を
土井 陸雄
1
Rikuo DOI
1
1横浜市立大学医学部衛生学
pp.394-396
発行日 1993年6月15日
Published Date 1993/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900819
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◆医学教育システムと教育内容
医学教育については,東京女子医科大学におけるチュートリアル・システムの導入,卒前臨床実習におけるクリニカル・クラークシップの導入,社会医学領域では保健所実習等への国費補助(国立大学のみ)など様々な取り組みがなされつつある.チュートリアル・システムの導入は,小中学校から始まる受験競争に慣らされてきた医学生を,教師からの一方的な知識伝達に受動的に従うことから能動的な学習に誘導し,医学への積極的な動機付けを獲得させることに,そしてクリニカル・クラークシップの導入は,より早期に臨床技術・手技に触れさせ,医師としての責任を伴う患者との交流を経験させることに最大の眼目があるものと思われる.
ところで,これらはいずれも教育システムに関するものであり,現代医学教育におけるその重要性については多言を要しないであろう.しかし,医学教育はシステムだけで行えるものではなく,「何を教えるか」,つまり教育内容と一体になって初めて意味を持ち得るものである.教育システムを革袋とすれば,教育内容はそれに盛る酒の関係と言えるのではなかろうか.「新しい酒は新しい革袋に」というが,革袋だけ新しくしても,中味の酒が新しくなければ本当の教育効果を期待することは出来ないであろう.
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