保健婦活動—こころに残るこの1例
ALSのGさんとの出会い
垣内 浩子
1
1耳原総合病院
pp.644
発行日 1992年9月15日
Published Date 1992/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900651
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大きな目で,大きな笑顔でベッドに横たわりながら,往診にいった私たちを迎えてくれたGさん.10年前のその出会いは私に大きな衝撃を与えた.この出会いは病院が在宅医療部を発足させ,私が専任で訪問看護を手探りで始めだした時だった.Gさん(54歳,女性)は難病中の難病といわれる筋萎縮性側索硬化症.その出会いの時,Gさんは発病後5年が経過しており,寝たきりの状態であった.病気は進行しており,手足はまったく自分で動かすことができず,全身の筋肉の萎縮は著明で,骨と皮ばかりだった.舌も萎縮し,構音障害が著明で口の動きでどうにか意思を感じとり,飲み込みも十分出来ず,食事や水分摂取も大変であった.こんな状態の人が地域にいる.家庭で,地域で生活している.それを知ったときの衝撃.今でも忘れることが出来ない.病院で,しかも通院していた人が,と通院されている患者さんのことも知らなかったと思い知らされた.
Gさんの看護は,目の不自由な妹さんが昼間通って看護にあたっていた.その妹さんが事故で通うことができなくなり,保健所や福祉事務所からは,なぜこんな重症の障害のある人を入院させないのかと言われた.が,私たちは本人の希望にそっての援助を考えていった.
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