特集 心温まる病院づくり
温かい病院の意義とあり方
石原 信吾
1
Shingo ISHIHARA
1
1前厚生省病院管理研究所
pp.745-749
発行日 1984年9月1日
Published Date 1984/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208393
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
病院は病人に対して医療が行われる場所である.そこでは,医師をはじめとする大ぜいの職員によって日夜休みなく仕事が行われている.医療の働きの対象となるものは,言うまでもなく人間の生命と健康である.生命は個々の人間にとって,一回限りのかけがえのないものである.人は生まれた以上,いつまでも生きることを願う.永生の願いは人間にとって最大の願いである.しかし,人はまた,生きて行く以上,その生が価値あるものであることを願う.そのためには,それだけの人生活動を続けることが必要で,健康はその基をなす.
こうした生命と健康を対象とする医療の働きが社会にとって絶対不可欠でかつ最も重要な働きであることは言うまでもない.とすれば,病院がその任務を立派に果たしている限り,社会の人々からその働きが感謝され評価されるのは当然である.しかし,一般に現実にはなかなかそうはいかない,むしろ,病院も含めた医療機関に対しては,逆に問責や非難の声のほうが大きい.これはどうしたわけであろうか.もちろん,社会の人々にとって不満な点があるからであろうが,その中に医療機関,なかんずく病院における温かみの欠如ということが含まれていることは間違いない.ホスピタリティという言葉があるように,病気という悲劇的事態を扱う医療の場に,温かさが求められるのは当然であるが,病院の現状はそれに程遠いものであるからである.
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.