特集 行動科学—その健康問題に果たす役割
アルコール依存症への行動科学的アプローチ
妹尾 栄一
1
,
斎藤 学
1
Ei-ichi SENO-O
1
,
Satoru SAITO
1
1東京都精神医学総合研究所社会病理研究室
pp.695-698
発行日 1991年10月15日
Published Date 1991/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900438
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■嗜癖的行動の諸相
アルコール依存症に関する行動科学的研究は,近年急速に進展しつつある領域の1つである.
人生に飢えと渇きを感じる人が,それを埋め合わせるために,例えば過剰な飲酒に走ったものの,そのうち自己の統御を超えてしまうとする.その場合,より良く生きようとして始めた行為がその主体者に背き,結果としてこれを損傷するというパラドキシカルな状況が出現する.斎藤7)は,自己のコントロール下にあったはずの習慣行動から派生し,自己のコントロールを外れる状態にいたったものを「嗜癖」の概念でとらえることを提唱し,具体的にはアルコール依存症,肥満,喫煙,薬物乱用,強迫的賭博などを包摂している.
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