特集 行動科学—その健康問題に果たす役割
禁煙への行動科学的アプローチ
島尾 忠男
1
Tadao SHIMAO
1
1財団法人結核予防会
pp.691-694
発行日 1991年10月15日
Published Date 1991/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900437
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■はじめに
喫煙が肺癌や慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患,虚血性心疾患,胃潰瘍など種々の疾患の発生要因となり,現在世界中で毎年ほぼ300万人の過剰死亡の原因となっていること,また喫煙は喫煙者の周囲にいる非喫煙者にも障害を与え,妊娠中の喫煙が生まれてくる子供の健康に影響するなど,受動喫煙が無視できない問題であることが,世界中で認識されてきている.しかし一方では,喫煙は現代社会に広く蔓延している習慣であり,わが国では成人男子の61%,女子の14%,合わせて成人の37%が喫煙者であることも無視できない現実である.
喫煙の健康への影響を考えれば,現在タバコを吸っていない人はそのまま吸わない状態を続け,現在吸っている人は喫煙を止めることができれば,最も望ましいことである.しかし喫煙を止めることの難しさを考えると,社会の中に当分はかなりの喫煙者がいることを前提に,非喫煙者を受動喫煙から守るために喫煙者と非喫煙者を分離し,分離が困難な公共の場所や輸送機関内では喫煙を禁止することも重要な対策となってくる.
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