特集 行動科学—その健康問題に果たす役割
糖尿病への行動科学的アプローチ
山内 祐一
1,2
Yuichi YAMAUCHI
1,2
1東北大学教養部保健体育学科
2東北労災病院心療内科
pp.699-704
発行日 1991年10月15日
Published Date 1991/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900439
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■はじめに
糖尿病は単なる身体疾患ではない.糖尿病がストレスによって顕在化しやすい病態とする考え方1)は興味深い.逆に,糖尿病罹患による二次的な心理反応も,糖尿病臨床家にしばしば経験される問題点である.糖尿病者によくみられる精神構造には,不満,不安,心気,強迫,うつ,失体感症などがある.言い換えれば,神経症傾向,または身心症傾向を示しやすいのである2).したがって,糖尿病に特有な病前性格を指摘するわけにはいかない3).個体によっては不適応にも過剰適応にもなる.これらに共通した背景要因として,生涯にわたる食事制限を強いられる慢性疾患であることを挙げねばならない.インスリン治療を要し,しかも合併症を有する場合や若年者ではとりわけ,心理社会経済的問題が生じやすくなるのは当然である4).日本人に多い肥満NIDDMに対応するには,どうしても減量に対するセルフコントロールが必要となる5).以上のような糖尿病者の行動変容を推進させるには,行動科学的アプローチが優れている6,7).筆者の自験例を示し,実践的な方法を述べることにする.
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