保健婦活動—こころに残るこの1例
家族の歩み 保健婦の思い
犬伏 明美
1
1徳島県徳島保健所
pp.202
発行日 1991年3月15日
Published Date 1991/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900306
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保健婦として6年半,人との出会いの中から生まれた喜びが,日々の活動の支えとなっている.保健婦は,ケースの気持ちや行動を受け止めることに始まり,保健指導を行っているが,時として,家族や保健婦の考えを優先し,ケースの主体性をおろそかにしがちである.その時,保健婦として,誰のために何をすべきなのか,考えさせられるところである.
私の「こころに残るこの1例」を挙げるとすれば,精神分裂病の33歳の女性と,彼女の家族のことである.彼女は,高校卒業後,地元の中小企業に3年間勤めたが,家庭の事情もあり退職.その頃発病したものと思われるが,家族は,生来おとなしい性格であるからと,病気には気付かず,24歳で婿養子を迎え,25歳で長女,27歳で二女を出産している.その間,妊娠中も受診しないことなどから,普通ではないと感じつつも,時々,家事や農業も手伝っていることや,婿養子への気兼ねから,治療のルートにも乗らず時間だけが経過していた.保健婦とのかかわりは,昭和62年春,2人の子供の面倒も見ず部屋にこもっている,との近隣からの情報に始まる.だが,当時,多忙であることを主な理由に,家族としては治療の必要性をそれほど感じていない状況にあった.
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