エスキュレピウスの杖
(11)日本からの手紙と訪問者
麦谷 眞里
1
Masato MUGITANI
1
1WHO本部
pp.126-127
発行日 1991年2月15日
Published Date 1991/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900283
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1.はじめに
先日,久し振りで1週間ほど日本に出張したら,思いがけない人々から,毎月,このエスキュレピウスの杖を読んでいます,と言われて恐縮した.また,そのうちの何人かの方からは,お世辞かも知れないが,毎月楽しみにしています,とも言っていただいた.これはすでに,別の雑誌で書いたことであるが,医学部の学生時代に,衛生学の講義で,初めてWHOのことを習った.確か,「国民衛生の動向」だったと思うが,WHOの組織図が載っていて,なんとなく自分とは遠い存在のような印象を抱いた覚えがある.その当時は,行政官になろうなどとは思ってもいなかったし,いわんや,WHOで働くことなど露ほども考えていなかった.さらに,楽屋落ちのような話になってしまうが,私はなんと,英語が不得意だったのである.その辺の顛末については,また別の機会に譲ることにして,私がこの連載で心掛けていることは,WHO及びその周辺の国際保健医療の状況について,できるだけ生の情報を提供しよう,ということである.誤解を恐れずもっと有り体に言えば,私が昔おぼろげに抱いていた国際機関とかWHOに対する幻想を,皆さんには,より現実に近い姿で紹介しようというものである.実際の姿を知って,さらに魅力が倍加する場合とがっかりする場合とがあるが,それは,読者自身の問題であるから,そこまでは私も関知しない.
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