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讀者の手紙
田村 彰
1
1岩手醫科大學内科學教室
pp.224
発行日 1950年11月15日
Published Date 1950/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200757
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- 文献概要
農村と結核 昭和10年以前は岩手縣の農村で結核患者をみる事は曉天の星の如しと云うてもよい程少なかつた。最近新聞紙上で農村に於ける結核患者の激増が傳えられているが,實際自分で體驗する迄は切實に響かなかつた。然し最近私は岩手縣中部の岩手縣としては比較的文化的な農村の二,三に往診してみて,結核患者の多い事を目の當りみて驚いた。その上結核に對する知識がないので家庭内感染を起し,子供1人丈殘してあとは全部死亡の果てた樣な家庭も1村に2,3のある事も知つた。農村に結核の蔓延したのは,軍隊又は徴用として都會に出て,榮養失調,過勞の不良條件で發病したものが,敗戰後帶患のまゝで村に歸り,これが感染源となつている事が最も大きな原因ではなかろうか。戰後民主々義が全國津々浦々まで滲誘した樣に見えるが,農村の封建的な影は未だまだ大きく殘つていて,患者の療養の妨げとなつているし,又今の處は戰中戰後のインフレの餘力のある家庭なら入院も可能であるが,次第にその餘力も少くなつている事も事實である。今度厚生省で結核對策本部を設け本格的に結核撲減運動を展開する事になつたが,2萬や3萬の増床では燒石に水の觀がないでもない。ある新聞の「聲」に赤い羽根の共同募金と同樣に結核共同募金とも稱する募金を行うべきであるとの意見があつたが,私はこの趣旨に大いに賛成している。
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