特集 国際化への公衆衛生の対応
日本の国際化と保健医療界—公衆衛生的視点より
長谷川 敏彦
1
Toshihiko HASEGAWA
1
1国際協力事業団医療協力課
pp.292-297
発行日 1990年5月15日
Published Date 1990/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900085
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■はじめに
今,日本の社会は,産業構造,社会状況そして人口構成において大きな変動期にある.医療は日本社会の一部なので,医療もまた,その供給体制においても,需要においても大きく変わりつつある(図1).さらにまた,極めて急速な技術革新のゆえに医療自身もその内部から変貌をとげつつあるということが出来よう.これらの変化の中でもローマ字の頭文字“K”で始まる三つの要因が,これらの動向をリードしている.第一番目の要因は近年急速に進行しつつある医療の高度技術化で,そのために新しい技術に関する情報,あるいは検査等技術によって生み出された情報が急速に増加しており,医療従事者に対する大きな負担となりつつある.またそれによって医療費が高額化し,社会に対しても,大きな経済的負担を生んでいる.第二番目の要因は,人口構成の高齢化である.日本は諸外国に見られない急速な高齢化の結果,2021年には世界で最も年老いた国,かつ人類史上かつてない高齢社会をむかえることになる.一方で,これまで老人のケアを支えて来た伝統的な家族構成が崩壊しつつあり,社会が直接老人を介護するサービスシステムを作り出さねばならぬ必要に迫られている.
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