特集 公衆衛生戦後30年
国際的にみた日本の公衆衛生戦後30年
橋本 正己
1
1国立公衆衛生院衛生行政学部
pp.462-467
発行日 1977年7月15日
Published Date 1977/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205410
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はじめに
世界的にみて,日本は社会の変化のテンポが最も速い国であるといわれる.かつて筆者は,WHOフェローとしてイギリスに留学中,London Schoolの公衆衛生史の講義で,"イギリスの社会はかつて一度も駆け足をしたことはない"という意味の講師の言葉―それはきわめて誇り高い表現のように感じられた―を聞いたことが,今でもなぜか印象に残っている.
明治維新以来100余年,日本社会の歩んだ道はまさに激動につぐ激動,いわば駆け足の連続であった,といってもいい過ぎではないだう.このことはまた,特に戦後30年の日本について切実である.しかしながら,個々人の日常生活そのものから切り離して考えることのできない健康の問題を,しかも社会的な規模の努力で保持増進することをめざす公衆衛生活動が,社会経済の激しい変化を直接,間接に鋭く反映してきたことは,当然といえる."地球は狭くなった"といわれる.まさにそのとおりである.小論では,とりわけ変化の激しかった日本の公衆衛生の戦後30年の歩みを,単に日本だけの問題としてではなく,世界のなかに位置づけてその特質を探り,今日の課題を考えてみたいと思う.
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