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病気の姿をデータで読む(9)下部消化器の癌—そして昭和の男たち
倉科 周介
1
Shiusuke KURASHINA
1
1東京都立衛生研究所環境保健部
pp.208-212
発行日 1990年3月15日
Published Date 1990/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900061
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わが国で癌対策が行政日程に上り始めたのは昭和30年代後半だった.当初,標的となったのは胃癌と子宮癌である.前者は戦前以来わが国の悪性腫瘍による死亡の筆頭の位置を堅持し,女子では子宮癌がそれに次ぐ第2位の座を占めていた.だからこの選択がすんなりと受け入れられたのも当然だろう.後ろにひしめく多くの新興勢力はなお弱体で,先行集団を脅かすまでに成長していなかったのだ.だが,当時すでに胃癌の低迷と子宮癌の凋落の傾向が兆していたことも事実である.事後論断の軽薄は慎まねばならないが,行政目標設定の難しさはここにもみられる.そして新興勢力の中には,人口構造との関係で一風変わった死亡発生パターンを示すものも少なくない.下部消化管の癌もその一つである.
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