研究ノート
東京都区部における部位別がん死亡率と環境的要因
牧野 国義
1
,
稲葉 裕
2
Kuniyoshi MAKINO
1
,
Hiroshi INABA
2
1東京都立衛生研究所環境保健部
2順天堂大学医学部衛生学教室
pp.189-193
発行日 1990年3月15日
Published Date 1990/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900054
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●はじめに
わが国の悪性新生物(以下がんと略す)死亡は,今日全死亡の約1/4を占あており,このがんの危険因子を明らかにすることが早急に望まれている.がんの危険因子については部位ごとにいくつか知られているが,未だ不明な部分も少なくない.また,がん死亡率は増加しているが,近年には医療技術などの進歩により,発がんから死亡に至る発症,進行の過程で治癒したがん患者の数も増加している1).この危険因子の解明のための手法の一つに,死亡率と環境的要因の地理的分布を比較する方法がある.地理的分布の地域単位としては都道府県2,3)ばかりでなく,区市町村1,4-7)を単位とした報告もある.地域単位を小さくすると,きめ細かい地域特性を推定することができ,発生要因を特定しやすくなる利点のある反面,1地域の人口サイズが小さくなり,死亡数が少ないほど偶然変動の影響は大きくなる.この対策として調査期間を長くする方法がある8,9)が,長過ぎると年次変化が隠れてしまう危険がある.今回,我々は1958年(昭和33年)から1984年(昭和59年)まで27年間の調査期間を5年程度(5期)に区切り,東京都区部の部位別がん死亡率に影響を及ぼすと思われる環境的要因の探究を試みた.
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