映画の時間
—100年前、自由を求め闘った一人の女性の生涯—風よ あらしよ 劇場版
桜山 豊夫
pp.104
発行日 2024年1月15日
Published Date 2024/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210226
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昨年は関東大震災から100年を迎えました。地震への対策はもちろんですが、発災時の混乱の中で、不確実な情報が広がり、朝鮮半島出身者や地方から興行に来ていた人たちが虐殺された事件が改めて注目を浴びました。その混乱の中で、アナキストの大杉栄と伊藤野枝、そして大杉の甥も生命を奪われています。今月は、伊藤野枝の生涯にスポットを当てた『風よ あらしよ 劇場版』をご紹介します。
女性は「家にあっては父に従い、嫁しては夫に従い、夫が死んだ後は子に従う」という「三従の教え」が美徳とされた大正時代。主人公の伊藤野枝(吉高由里子)が仮祝言を挙げている場面から映画は始まります。酔った許婚の父(渡辺哲)は、野枝の腰をなでながら、これなら立派な子を産める、などと言っています。今ならセクハラものでしょう。
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