連載 ヒトとモノからみる公衆衛生史・3
マスク大国となった日本・3—食品衛生マスクの歴史——神・天皇・将軍のための口覆いから学校給食マスクへ
住田 朋久
1,2
1慶應義塾大学大学院社会学研究科
2国際日本文化研究センター
pp.809-813
発行日 2023年8月15日
Published Date 2023/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210113
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はじめに
宮崎駿監督作品『千と千尋の神隠し』(2001年)は湯屋が舞台というだけで公衆衛生に関わりが深いことは明らかだが、その中に従業員が白い布で口(と鼻)を覆う場面が登場する。一つは悪臭を放つオクサレ様に応対するとき。そしてもう一つは客である神様の食べ物を盛り付ける場面である(湯婆婆(ゆばあば)登場の前)。前者は「自身を守るためのマスク」、後者は「他者を守るためのマスク」といえる1)。
後者のような食品衛生マスクは世界の食品取り扱い施設に広がっているが、日本では多くの人々が小学校の給食当番でマスクを着けた経験を持つ2)。こうしたマスクはいつどのように広まったのだろうか。その際、政府や専門家はどれほど主導してきたのだろうか。
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