講座 2頁の知識
マスク
豊川 行平
1
1東大
pp.16-17
発行日 1952年2月10日
Published Date 1952/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200227
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マスクといつても,防毒用のもの發塵作業場などで用いる防塵用のものなどがあるが,ここでは保健婦さんなどが日常用いているガーゼマスクについて述べることにする。
周知のように,ガーゼマスクは呼吸器系傳染病の傳染樣式である飛沫傳染を防止するにあるわけである。これには,患者が用いる場合と健康者が用いる場合とがあるが,患者が用いるのは極めて合理的で,その効果については誰も疑うものはいない。マスクをつけずに,患者が大聲で話をしたり,咳やくさめをした場合には,口中の飛沫は想像以上に遠方まで飛ぶものである。バルテンシュタィンが結核患者について検査をしたところによると,咳嗽によつて前方1.5米,上方1.5米,後方0.5米まで飛沫が飛散するそうである。この場合,患者がマスクを着用すると飛沫の飛散は非常に制限されるばかりでなく,危險の大きい,つまり病原體を多く含んでいる大きた飛沫がマスクにとられるため,他人への感染防止に大いに役立つのである。だから,患者が健康者と面會するような際には必らずマスクを着用するよう指導しなければならない。
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