連載 衛生行政キーワード・149
人生100年時代における治療と仕事の両立
伊藤 遼太郎
1,2
1株式会社クボタ
2(前)厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課
pp.805-808
発行日 2023年8月15日
Published Date 2023/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210112
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はじめに
わが国の労働安全衛生行政は、職場における労働者の安全と健康を確保するべく、1972年に労働安全衛生法を施行して、累次にわたる法改正や関連指針の策定等が行われてきた。職場の労働安全衛生の課題は、結核等の感染症、技術革新に伴う労働災害や職業病等といった健康障害の対応から、社会の変化に応じて、健康障害の予防や早期発見の観点を含み、健康保持増進対策へと拡大してきた。近年は、労働安全衛生法が制定された当時には想定されていなかった、働き方改革への対応、メンタルヘルス対策、女性の就業率の増加に伴う健康課題、テレワークの拡大による課題、化学物質の自律管理等、多様な産業保健上の課題への対応が求められている。
特に、深刻な少子高齢化による生産年齢人口の減少が喫緊の社会的課題となっている中で、定年延長等の背景から労働者の高齢化が進行の一途をたどっており、全労働者に占める65歳以上の割合は毎年増加している1)。これに伴って、労働安全衛生法に基づく定期健康診断の有所見率も増加しており2)、医療面でもさまざまな疾患の治療法の開発や生存率の向上等の技術進歩が著しいことから、今後は企業において、疾病を抱えながら働き続けたいと希望する労働者が、治療と仕事を両立できるような支援が必要になる場面がさらに増していくと考えられる。
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