特集 飲料水の安全と安心の確保
扉
秋葉 道宏
1
,
「公衆衛生」編集委員会
1国立保健医療科学院生活環境研究部
pp.65
発行日 2021年2月15日
Published Date 2021/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209553
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わが国の水道の普及率は,現在98%に達し,ほとんどの国民が水道による水の供給を受けることができるようになりました.しかしながら,2%,およそ250万人の未普及人口が存在します.未普及人口の多くは,採算面から配水管を布設することができない中山間地域等に点在して居住しており,給水人口100人以下の小規模な集落水道や飲用井戸などによる給水がなされています.これらの施設は,水道法の規制適用対象外であり,地方公共団体の条例又は要綱等によって衛生確保がなされていますが,一般に水質面や維持管理上の問題を抱えています.また,寄宿舎,社宅,療養所など自家用に水を供給する専用水道やビル,マンション等の貯水槽水道は,設置者に管理責任がありますが,管理の不徹底は利用者の水質面での不安感の大きな原因となっています.
飲料水の健康危機事案には,風水害,地震等の自然災害,水質事故,テロ等が挙げられます.1997(平成9)年3月に制定された飲料水健康危機管理実施要領に基づき,厚生労働省水道課に地方公共団体から報告された健康危険情報を見ると,健康への影響を発現した事案の多くは,水道法の規制適用対象外の小規模の施設,専用水道,貯水槽水道で発生しています.水道にとって最も根幹的な課題の一つは,全ての国民が安全で,安心して飲用できる水の供給を受けるようにすることであり,そのためには,これらの施設の維持管理水準の向上に向け,施策を展開する必要があります.
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