- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
大阪大学大学院医学系研究科附属ツインリサーチセンター(以下,当センター)は「双生児研究」(ツインリサーチ)を専門に行う機関として,2009年4月に設置され,2019年で10周年を迎えた.双生児研究はあまり聞いたことがない分野だと感じる方も多いかもしれない.
筆者と双生児研究の関係は大学生時代にさかのぼる.当時,大阪大学医学部保健学科に在籍していたが,指導教授であった早川和生先生(大阪大学名誉教授)が双生児研究に携わっておられた.このため,双生児研究は非常に身近な研究分野であったものの,筆者自身は別の研究テーマを選んでおり,深く携わることなく卒業した.その後,保健所保健師として母子保健事業に従事し,また,大学院で公衆衛生学を学んで,再び早川先生(当時,当センター長)の下で双生児研究に従事することとなった.
ところで,双生児研究には「ふたごの」「ふたごによる」「ふたごのための」研究がある(図1).「ふたごの」研究とは,ふたごの妊娠をはじめとした,ふたごはなぜ生まれるのか,また単胎の場合と異なるふたご特有の現象など,ふたごに関する研究をいう.「ふたごのための」研究は,その名のとおり,ふたごの方々に特有な問題を解決することを目指した研究を指し,ふたごをどう育てるかといった多胎育児支援に関連した研究が最もイメージしやすいだろう.「ふたごによる」研究とは,ふたごを対象者として,さまざまな表現型や現象における遺伝と環境の影響に関する研究を指すが,ふたごだけでなくヒト全般における影響についての知見が得られるところとなる.これらは独立しているものではなく,重複する分野もある.
双生児研究の歴史,日本で行われている取り組みや海外の大規模な双生児研究については既刊1)〜3)を参照いただきたい.
おそらく,多くの読者は「双生児研究」と聞くと,「ふたごの」または「ふたごのための」を想像される方が多いであろう.これらの双生児研究はいずれも重要であり,当センターでも総合的に取り組むことを目指しているが,本稿では当センターの中核をなす「ふたごによる」研究を中心に紹介し,公衆衛生と研究をつなぐ架け橋について考える.
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.