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はじめに
自治体の歯科保健活動の多くを占める母子歯科保健
母子保健法に基づき,全国の市区町村では母子歯科健康診査や各種相談事業が行われている.歯科衛生士を配置する都道府県,市区町村は必ずしも多くなく,上記のような事業に当たっては,保健師や管理栄養士が歯科保健事業を担当することが多い1).歯科衛生士を配置していない自治体にとっても,常勤での配置が多い地域での事例は参考になると考えられる.千葉県は市町村に勤務する常勤歯科衛生士が多い自治体の一つである.2019年4月1日現在,千葉県内の54市町村のうち37市町(68.5%)に101名の常勤歯科衛生士が配置されている.
歯科保健事業はライフステージ別に実施されるが,2017年の千葉県内市町村のライフステージ別の歯科保健事業実施市町村数は,妊産婦対象が37(68.5%),1歳未満対象が45(83.3%),1〜4歳対象が全54市町村(100%),保育園などが42(77.8%),小中学校が40(74.1%)であり,母子歯科保健事業の実施率は高い.一方,成人や高齢者に目を向けると40歳未満を対象とした事業は32(59.3%),40歳以上は35(64.8%),要介護者13(24.1%),介護予防一次予防事業26(48.1%),一般介護予防事業11(20.4%)であり,成人期以降は必ずしも多くの市町村で事業が実施されているわけではない2).市原市(当市)においては,5人の常勤歯科衛生士のうち4人が子育てネウボラセンターに配属されており,母子歯科保健事業を担当している.子育てネウボラセンターでは保健師,管理栄養士,歯科衛生士などによる妊娠・出産から子育てまでの切れ目のない相談支援を行っている.
少子高齢社会を迎えた現在においても,市区町村の歯科保健事業において母子歯科保健事業の占める割合は高い状況にある.本稿では,広く伝統的に展開されている母子歯科保健事業について全国調査から見えてきた実態を紹介し,それを自治体において多職種によって実施する意義を述べる.
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