特集 公衆衛生の実践倫理
健康格差の是正—公衆衛生倫理の視点で考える
井上 まり子
1
1帝京大学大学院公衆衛生学研究科
pp.184-189
発行日 2019年3月15日
Published Date 2019/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209094
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はじめに—健康格差とは
人々の健康度には差がある.地域や社会経済状況の違いによる集団の健康状態の差を「健康格差」という.社会疫学の研究から,所得階層,教育,職位などが高水準にあるほど疾病罹患率や死亡率が低いことなどが知られている1).日本では近藤2)らによる日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study:JAGES)が代表的な研究であり,これによると,高齢者のうつ発症や主観的健康感の悪さ,健診の低受診率などが低所得者層でみられる.今日では英国や米国はもとより,日本でも健康格差の存在は疑う余地がない.
健康格差の存在が明確になるにしたがって,それに対する介入が考え始められている.「健康日本21(第二次)」3)の目標として「都道府県別の平均寿命の差にみられる地域の差の是正」が採用された.健康格差とその是正は公衆衛生の一般的話題になり始めている.
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