特集 医療の拡大がもたらす社会の厚生―医療費亡国論再考
【論文集】適切な医療の拡大がもたらす社会の厚生
格差是正,景気浮揚,雇用誘発の視点から
大内 講一
1
1日本福祉大学
キーワード:
医療崩壊
,
医療費規模
,
患者負担
,
経済効果
,
制度選択
Keyword:
医療崩壊
,
医療費規模
,
患者負担
,
経済効果
,
制度選択
pp.260-263
発行日 2010年4月1日
Published Date 2010/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101668
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2010年度診療報酬改定の中医協審議は,再診料をめぐって診療側に内紛が生じ,この内紛を公益委員が調停するという異例の展開の中で終結した.政府予算案編成時に医療崩壊を解消するため総枠0.19%の引き上げが決定され,4,800億円と見込まれる引上げ分のほとんどを入院医療に配分する審議結果となった.マスコミはこれにより「勤務医の待遇改善」が可能と論じたが,ことはそれほど簡単ではない.
勤務医の過酷な状況を改善する唯一の方策は,医師を補充することである.今回の改定により総額では病院の増収となるが,これを分配すると1病院当たりの増収は高が知れている.そのため各病院が医師を1人だけでも補充できるかどうかは大変疑問で,今回改定から期待される勤務医の待遇改善は,せいぜい「超勤手当の引上げ」に止まるように思われる.勤務医の抜本的な待遇改善には医療費財源のさらなる増加が必要である.
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