特集 脳性麻痺と産科医療補償制度
脳性麻痺児の在宅支援—NICU入院児支援コーディネーターを含む病院スタッフと,地域ケア専門職との連携
内田 美恵子
1
,
今井 ゆか
2
,
小泉 恵子
3
,
田村 正徳
4
1埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター
2埼玉医科大学総合医療センター患者支援室
3埼玉医科大学総合医療センター看護部
4埼玉医科大学総合医療センター小児科
pp.548-555
発行日 2018年7月15日
Published Date 2018/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208929
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はじめに—NICU長期入院児問題とは
2008年に,都内の産科クリニックからの妊婦の緊急入院が都内の7カ所の周産期医療センターに断られて,妊婦が死亡するという事件が発生した(B病院事件).われわれ周産期医療関係者にとってショックであったのは,受け入れを断られた主な理由が「NICU(neonatal intensive care unit.新生児集中治療室)が満床であったから」ということであった.それまでは,NICUは1,000出生当たり2床あればよいと考えられていたが,ハイリスク新生児の増加と救命率の向上によって,1,000出生当たり3床必要であることが明らかになった.全国的なNICU病床の増床には時間がかかるため,「NICU長期入院児問題」が注目されることとなった.
上記を受けての2009年の大阪府医師会による「NICU長期入院児解決のための緊急提言」1)(以下,本提言)には,①NICU後方病床の確保,②在宅医療の推進と支援,③コーディネーターの配置,が挙げられている.また,本提言ではNICU入院児支援コーディネーター(以下,コーディネーター)は「出産に係る周産期医療提供体制の確保に資するため,病院のNICUや小児病棟等に長期入院する児童について,保健医療分野の専門家が支援を行うことで,退院後の自立生活を送るためのエンパワメントや退院促進のためのコーディネイト等を行う」としている.本提言は,2010(平成22)年に策定された東京都の周産期医療体制整備計画のコーディネーターとして実現され,その具体的な役割は「NICU入院児支援コーディネーターのためのハンドブック」2)に記されている.
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