特集 聴覚障害の早期発見と支援体制
人工聴覚器の進歩—人工内耳装用児の言語発達を中心に
白井 杏湖
1,2
,
河野 淳
1,2
1東京医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野
2東京医科大学病院聴覚・人工内耳センター
pp.474-479
発行日 2018年6月15日
Published Date 2018/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208911
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人工内耳の歴史
わが国における人工内耳の歴史は,1985年に東京医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野(以下,当科)で多チャンネルの人工内耳埋め込み手術を施行したことに始まり,すでに30年以上が経過した.1994年に人工内耳(cochlear implant:CI)が保険適応となり,1998年には日本耳鼻咽喉科学会からその適応基準が示された.1998年には,米国でYoshinaga-Itanoら1)によって先天性難聴児においては早期に療育を開始することが言語や学習に有効であることが報告された.これを契機にして,米国の各州では米国小児学会の推進の下,全出生児を対象にし,新生児聴覚スクリーニング検査を義務付ける法制化が進んだ.
上記のような背景や人工内耳機器の進歩によって,わが国でも2000年代に入って小児のCI装用例が増加した.さらに,2014年の「小児人工内耳適応基準」の改訂2)によって,手術の低年齢化がさらに進んだ.また,この頃から,わが国ではCI以外の人工聴覚器も承認が進んできた.2017年には「成人人工内耳適応基準」3)が改訂され,30年経過した今なお,人工内耳をはじめとする人工聴覚器は進歩・変遷を続けている.
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