投稿・資料
2004年の新医師臨床研修制度施行以降における,ジニ係数を用いた医師の診療科ごとの地域偏在についての検討
石川 雅俊
1,2
1厚生労働省医政局総務課
2前 国際医療福祉大学大学院
pp.334-338
発行日 2018年4月15日
Published Date 2018/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208876
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はじめに
2004年4月に臨床研修制度が導入されて以降,地方の医師不足の問題が顕在化したという指摘がある1).特定の分野(特定の地域,診療科など)における医師不足を指摘する声の強まりを受けて,厚生労働省は2005年に「医師の需給に関する検討会」を設置し,医学部定員の増員を行うことで全国的な医師数の増加を図るとともに,医師が自らの勤務地や診療科を自由に選択するという,自主性を尊重したさまざまな地域偏在対策を講じてきた.しかし,厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」の中間とりまとめ(2016年6月)では,前述の偏在対策にもかかわらず,地域における医師不足は解消していないとしている2).他方で,診療科偏在に関する言及はみられない.従来,不足が指摘されてきた小児科や産婦人科の医師数は2008年以降増加傾向にあることから3),診療科偏在は解消しつつあるようにも見える.
医師の地域偏在,すなわち,医師過密地域と医師不足地域の医師数の格差については過去にもいくつか研究が行われており,医師の地域偏在はほとんど変わっていないか,悪化していることが示されている4)〜6).これらの研究はいずれも10年間での医師分布の推移をみているが,医師の偏在対策が始まった2008年以降のデータを用いて医師の地理的な偏在を分析した研究は少ない.診療科ごとの地域偏在については,Matsumotoら7)が2006年時点の日本と米国の医師配置を比較し,わが国は開業率の低い診療科ほど医師数が少なく,医師の地域偏在は拡大する傾向がみられたとしているが,診療科ごとの地域偏在の推移について検討した論文はない.
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