特集 「早期発見」をめぐる課題
自治体における任意型がん検診の現状と課題—PSA検診はスクリーニングになっていないうえに,過剰治療となっている
岩室 紳也
1
1ヘルスプロモーション推進センター(オフィスいわむろ)
pp.105-111
発行日 2018年2月15日
Published Date 2018/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208827
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
「がん」という診断名が議論の妨げに
筆者は2009年に,「公衆衛生」誌の73巻12号に「前立腺がん検診の有効性に関する議論と今後の展望」1)を執筆した.全国の主だった病院の泌尿器科医に送り,議論が盛り上がることを期待した.しかし,泌尿器科医から返ってきた反応は,「『がん』と診断された患者さんを放置できますか?」というものであった.
反省を込めて正直に告白すると,上記の原稿には“da Vinci®サージカルシステムは手術時間を短縮しリスクを減らせる”ことや“致死的前立腺がんに対して敏感度も特異度も高いスクリーニング方法が早く開発されることを期待したい”と記述していたが,前立腺がん検診〔以下,PSA(prostate specific antigen)検診〕の問題点をぼかしていた.言い訳になるが,2003年1月に今上天皇が前立腺がんの手術を受けられており,「PSA検診はスクリーニングになっていない」と書けなかったのである.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.