特集 原子力災害と公衆衛生—避難指示解除後の地域復興に向けて
福島県浜通りの原発事故後の地域医療体制の変遷と残された課題
谷川 攻一
1,2
1福島県立医科大学
2ふたば救急総合医療支援センター
pp.308-314
発行日 2017年4月15日
Published Date 2017/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208645
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はじめに
福島県浜通りは,北は宮城県に接する新地町から南はいわき市まで福島県の東部太平洋沿岸に位置する一帯を指し,東日本大震災では福島県において最も大きな被害を受けた地域である(図1).加えて,福島第一原子力発電所事故後には,半径20km圏内は警戒区域として立ち入りが禁止され,20〜30km圏内は緊急時避難準備区域(緊急時に屋内退避または避難),そして20km圏外においても事故後の年間積算被ばく線量が20ミリシーベルトを超える地域は計画的避難区域として住民に避難が求められた(図2)1).当然ながら,避難指示区域内では医療機関や介護福祉施設は施設避難せざるを得ず,避難指示区域外に位置した医療機関や施設でも,地震による被害に加えて,スタッフや物資が不足するという困難な状況に遭遇した.
その後,福島第一原子力発電所の復旧作業が進み,地域の環境除染が進む中で,2014(平成26)年には田村市と川内村の避難指示区域となっていた一部が,そして2015(平成27)年には楢葉町,2016(平成28)年には川内村全域において,さらには葛尾村と南相馬市小高区の避難指示が解除された.今後,当該地域では帰還する意向を持つ避難住民に加え,廃炉作業員や除染インフラ復旧作業員など合わせておよそ50,000人を超える対象人口が想定されている2).
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