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はじめに
双葉郡は福島県東部沿岸部およびその周辺に位置する8つの町村から構成されており,福島第一原子力発電所事故(以下,事故)では多くの住民が避難を余儀なくされるなど大きな被害を受けた地域である(図1)1).
双葉郡の事故前の人口は72,822人であったが2),事故によって,発電所から半径20km以内の町村,北西部に延びる浪江町の一部,葛尾村が避難指示区域と指定され,その地域に住む全ての住民が避難することとなった.
環境除染が進む中で避難指示は順次解除され,2015年には双葉郡の居住者数は7,333人(事故前のおよそ10%)となり3),2017年3月には福島第一原子力発電所が位置する2町(双葉町と大熊町)と,一部を除き全ての町村で避難指示が解除されることとなった(図1)1).住民の帰還に呼応して,徐々にではあるが,診療所の診療再開や開設があった.しかし,双葉郡内の医療ニーズに対応する医療体制の整備は遅れている.その背景には,原発事故の影響のために医療スタッフを確保することが極めて困難であることや,医業収益のみでは採算が取れないこと,将来の医療ニーズが不透明なため診療再開がちゅうちょされることなどが挙げられている4).
上記のような状況を踏まえ,双葉地域(「双葉郡等避難地域」という意味で,双葉郡8町村に加えて,南相馬市小高区,飯舘村など避難指示が出された地域を指す)の医療体制整備を急ぐべく,2016年4月に福島県立医科大学は福島県からの委託を受けて,「福島県立医科大学附属病院」(以下,医大附属病院)に「ふたば救急総合医療支援センター」(以下,当センター)を設置した.当センターの役割は,当面の双葉地域の二次救急医療の確保と双葉地域の広域的な総合医療支援,そして後述する双葉郡の新病院開設へ向けた準備と開設後の支援である.本稿では,当センターのこれまでの活動と,今後の課題を報告する.なお,当センターは,福島市にある福島県立医科大学附属病院に属する施設である.一方,後述する新病院である「福島県ふたば医療センター附属病院」は2018年4月に双葉郡富岡町に開設された病院である.両者は名称が類似しているため混同されやすいが,別の組織である.
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