特集 原子力災害と公衆衛生—避難指示解除後の地域復興に向けて
福島県原発災害後の公衆衛生体制—現状と課題
遠藤 幸男
1,2
1福島県県北保健所
2福島県保健所長会
pp.293-299
発行日 2017年4月15日
Published Date 2017/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208643
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はじめに
2016(平成28)年3月で東日本大震災から5年が経過する.集中復興期間から被災地の自立につながるものとし,地方創生のモデルとなることを目指すため同年4月から復興・創生期間に入ったが,今なお(同年12月現在)福島県内外に82,547人が避難している.
2011(平成23)年3月11日午後2時46分に発生した東日本大震災は,マグニチュード9.0の激震であり,それに伴う大津波により,本県では沿岸部の浜通り地方が大被害を受け,また,中通り地方等でも建物の倒壊等の大被害を受けた.さらに,東京電力福島第一原子力発電所事故が発生し,放射性物質が大量に放出される原発災害となり,この3つの災害が広域同時多発であったことから,市町村はじめ行政機能そのものが大被害を受けることとなった.
このため,避難指示等により最大数164,865人2)の県民が県内外に避難し,健康支援活動にも大きな影響を及ぼした.原発災害の影響が大きい市町村では,避難指示による住民の分散避難や役場機能の移転などにより,避難者の緊急被ばくスクリーニング検査を当初優先する必要があったことから,市町村や県内の関係団体等の協力で初動対応をしてきた.さらに,県外から保健師や支援調整職員の派遣など,被災住民への地域保健・健康支援活動に対して,多くの専門職等による支援を受けた.
本稿では,それらの状況を踏まえ,福島県における原発災害後の公衆衛生体制の現状と課題について報告する.
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