連載 [講座]子どもを取り巻く環境と健康・15
児の精神神経発達と環境化学物質(2)
ダイオキシン類曝露と児の神経発達
中島 そのみ
1
,
岸 玲子
2
1札幌医科大学保健医療学部 作業療法学科
2北海道大学環境健康科学研究教育センター
pp.371-378
発行日 2016年5月15日
Published Date 2016/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208432
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ダイオキシン類やPCBなどの内分泌かく乱化学物質の次世代影響の1つとして,児の神経発達への影響が指摘されている.低濃度汚染地域(日常生活レベル)については,ダイオキシン類による児の神経発達との関連を縦断的に調査した研究は,海外ではオランダとドイツ,日本ではわれわれの札幌コーホートに限られる.これらの研究は,曝露濃度を測定する生体サンプルの種類,曝露指標(PCBかダイオキシンか等),神経発達の評価指標と測定時期が研究ごとに異なっているため,結果を直ちに比較することができないといった問題がある.しかし乳幼児期にはダイオキシン類による児の神経発達への影響が見られるが,学齢期には適切な家庭環境による知的な刺激等により改善するため,成長とともに影響が検出されづらくなるという報告が多い.ADHD(注意欠如・多動性障害)やASD(自閉スペクトラム症)については十分なデータがない.また,ダイオキシン類の性ホルモン作用との関係で男女により影響が異なる.引き続き検討が必要と思われる.
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