連載 いま,世界では!? 公衆衛生の新しい流れ
これからのグローバルなNCD予防を考える
長谷川 みゆき
1
,
磯 博康
1
1大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学専攻公衆衛生学教室
pp.212-216
発行日 2016年3月15日
Published Date 2016/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208386
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多くの途上国が近年急激に経済的成長を遂げるに伴い,世界の疾患構造が転換期を迎えている.感染症ではなく心血管疾患(cardiovascular disease;CVD)が障害調整生命年(disability-adjusted life year;DALY)リストのトップとなり,国際保健の理念や優先順位,手法は変わりつつある.世界の平均寿命は70歳に近づき,5歳以下の人口を60歳以上の人口が上回る「少子高齢化」現象がみえるようになった1).こうした背景から,中高年期に多い生活習慣病(NCDs:非感染性疾患)は世界の成人死亡要因の上位を独占するようになった2).一方で,多くのCVDは,世界保健機関(WHO)の推奨するNCDリスク対策,すなわち禁煙,健康的な食事の摂取,身体活動量の増加,アルコール摂取量の抑制で予防できることがわかっている.さらに,CVD患者ならびに高血圧や糖尿病といったハイリスク者は,より早期からリスクに対する適切な治療を受ける必要がある3).
本稿では,世界の心疾患の疫学的な特徴と動向ならびにWHOが重点を置き始めたNCD予防の取り組みについて述べる.
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