連載 衛生行政キーワード・105
循環器疾患対策
髙山 啓
1
1厚生労働省健康局健康課
pp.208-211
発行日 2016年3月15日
Published Date 2016/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208385
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成人病から生活習慣病へ
かつて心臓病,脳卒中,がんなどの40〜60歳位の働き盛りに多い疾患は成人病と呼ばれ,年齢の上昇に従ってその頻度が増えるため,人口の高齢化に伴い有病者が増加すると考えられた.一方で喫煙,食生活や運動などの生活習慣とこれらの疾患の関係が明らかとなり,生活習慣の改善によりある程度予防が可能であることが解明されてきたため,1996(平成8)年,当時の公衆衛生審議会の意見具申「生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性について」において,がん,循環器疾患,糖尿病などには,生活習慣に着目した生活習慣病という名称が新たに導入され,「食習慣,運動習慣,休養,喫煙,飲酒等の生活習慣が,その発症・進行に関与する疾患群」と定義された.
虚血性心疾患は,高血圧症,脂質異常症,糖尿病,喫煙などの危険因子が共通することから,脳血管疾患と合わせて循環器疾患と総称される.循環器疾患を含む生活習慣病は効果的な発症予防が期待できることから,厚生労働省では,一次予防から三次予防までの総合的な対策を実施してきた.生活習慣病予防においては,早期発見・早期治療を重視する二次予防中心の従来のハイリスク・アプローチに加えて,生活習慣を見直し,環境改善などにより病気の発生そのものを予防する一次予防によるポピュレーション・アプローチの重要性が認識されるようになり,生活習慣病の認識を国民に啓発し,行動に結びつけることが重要と考えられるようになった.
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